インスリン分泌能が低い日本人は、軽度の肥満でも血糖値が上昇しやすい体質にあります。本記事では、境界型血糖値への早期介入の重要性を解説するとともに、空腹時血糖値を正常域へ導く「アカシア樹皮由来プロアントシアニジン」のヒト臨床試験結果と、5つの体内メカニズム研究の成果について紹介します。
糖尿病および血糖値異常の世界・国内の最新動向
慢性的な高血糖状態を特徴とする糖尿病は、現代社会において最も深刻な非感染性疾患の一つです。その発症メカニズムや診断基準、ならびに社会的な動向を理解することは、早期介入の臨床的意義を評価する上で不可欠な基礎知識となります。
糖尿病患者は世界的に増加している
国際糖尿病連合(IDF)の報告によると[1]、世界における成人糖尿病患者数は増加の一途をたどっており、医療経済や公衆衛生における最大の懸念事項となっています。糖尿病の本態は、すい臓のβ細胞からのインスリン分泌不全、あるいは末梢組織におけるインスリン抵抗性が問題となる慢性的な代謝障害です。
高血糖状態が持続すると、網膜症、腎症、神経障害といった三大合併症や動脈硬化性心疾患や脳梗塞のリスクが一気に高まります。現代の臨床においては、一時的に上昇している空腹時血糖値や食後血糖値だけではなく、過去1〜2ヶ月間の平均血糖状態を反映する「HbA1c(ヘモグロビンA1c)」による血糖管理の重要性がますます高まっています。
日本国内における患者数・予備群の年次推移
厚生労働省が実施している「国民健康・栄養調査」の最新データ(令和6年公開値公表)によると[2]、我が国における「糖尿病が強く疑われる者」の割合は、男性で17.7%、女性で9.3%に達しています。この数値は特に近年の高齢化に伴い、高い状態で推移しています。

日本人の糖尿病の9割以上を占める「2型糖尿病」は、遺伝的要因(インスリン分泌能の低さなど)に、食べ過ぎ、運動不足、肥満、ストレスといった生活習慣の乱れが加わることで発症します。
特筆すべきは、今、糖尿病の診断基準に至らないものの、将来的な発症リスクが極めて高い「糖尿病予備群(境界型)」の存在です。これら予備群を含めると、国内の対象者は数千万人規模にのぼると推計されています[2]。
糖尿病の臨床的診断基準

臨床における糖尿病の診断は、血液検査によって得られる「血糖値」と「HbA1c」の組み合わせによって段階的に判定されます[3]。具体的には、以下の4つの判定基準のうちいずれかが確認された場合、第一段階として「糖尿病型」と診断されます。
確実な診断のためには、別日に実施した再検査での再現性、あるいは「血糖値の糖尿病型」と「HbA1cの糖尿病型(6.5%以上)」の同時に満たす必要があります。一方、これら糖尿病型の基準には満たないものの、正常域(空腹時血糖値 100 mg/dL 未満かつ75gOGTT2時間値 140 mg/dL 未満)を超えている領域が「境界型(予備群)」と定義され、医療介入や厳格な生活習慣の改善が推奨される領域となります。
高齢者における血糖値管理には注意が必要
日本の糖尿病において無視できないのが、加齢に伴う耐糖能の低下です。厚生労働省の統計でも示されている通り、男女ともに70代に向けて糖尿病型と判定される割合が顕著に増加します。

高齢者糖尿病の管理においては、若年・壮年層とは異なる臨床的な配慮が求められます。高齢者では、血糖値が下がりすぎたことに気づきにくく、また、体内で血糖値を上げようとする働きも弱まっているため、厳格すぎる血糖コントロールは重症低血糖を誘発するリスクがあります。低血糖になってしまうと、それに伴って認知機能の低下や転倒・骨折などの危険性も増してしまいます。
そのため、日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会によるガイドライン[4]では、患者の「認知機能」「ADL(日常生活動作)」「併存疾患」の3つのカテゴリーに基づき、個別の血糖コントロール目標(HbA1c目標値)を設定することが推奨されています。例えば、認知機能が低下している高齢者で低血糖リスクがある薬剤を使用している場合、目標値の下限を設けるなど、安全性を最優先した「個別化医療」の視点が不可欠です。
なぜ日本人は「血糖値が高くなりやすい」のか?体質的特徴と診断基準
我が国における糖尿病患者および予備群の増加を抑止する上で、日本人が生まれつき持っている『血糖値をコントロールする力の弱さ』を正しく知っておくことは非常に大切です。欧米人との違いと、「正常高値」のリスクについて紹介します。
欧米人に比べて日本人はインスリンの生産量が少ない

2型糖尿病の根本的な原因は「インスリン分泌不全」と「インスリン抵抗性」の2つに大別されますが、日本人が糖尿病を発症する根本的な仕組みは、欧米人と大きく異なります。
欧米人の2型糖尿病では、肥満を背景とした末梢組織(骨格筋や脂肪組織)におけるインスリン抵抗性が主因となるケースが多く見られます。この場合、膵臓に十分な余力があり、インスリンを大量に作り出す力を持っているため、極度の肥満に至るまで血糖値が上昇してしまうことがないという特徴があります。
一方で、日本は、正常な段階からインスリンの初期分泌能(食事を摂取した直後に素早くインスリンを放出する能力)が欧米人に比べて著しく低く[3]、そのため、欧米人のような目立った肥満になることもなく、わずかな体重増加や運動不足、あるいは高脂肪食への偏りにより、簡単に膵臓によるインスリン生産量を超えてしまいます。結果として、食後の急激な血糖上昇(血糖スパイク)を引き起こしやすく、これが慢性的な高血糖、つまり、糖尿病へと移行してしまうのです。
「正常高値(100〜109 mg/dL)」はすでにリスクの入り口
糖尿病の診断基準において、空腹時血糖値が126 mg/dL以上は「糖尿病型」、110 mg/dL以上126 mg/dL未満は「境界型(予備群)」と定義されています。ここで特に注意しなければいけない点は、正常域の中に含まれる「正常高値(空腹時血糖値 100〜109 mg/dL)」の領域です。
一般的な健康診断では「正常域」と判定されるため、まだ大丈夫だったと考えがちですが、この段階ですでに膵臓のインスリン分泌能や肝臓での糖を代謝する能力の低下が始まっていることが分かっています[3]。臨床データからも、空腹時血糖値が100 mg/dLを超えている者は、100 mg/dL未満の者に比べて将来的に糖尿病を発症するリスクが有意に高いことが示されています[3]。
そのため、この正常高値に該当する患者に対しては、将来の糖尿病発症およびそれに伴う心血管疾患発症へと発展させないために、「75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)等」による追加の検査を行うこと、ならびにこの段階からの積極的な生活スタイルの変更や機能性素材の活用が推奨されます。
【臨床エビデンス】アカシア樹皮由来プロアントシアニジンによる空腹時血糖降下作用
前章までに述べた通り、日本人の体質的要因や年齢を重ねるにつれて、血糖値をコントロールする力が衰えていくことに対しては、早くから十分な対策をとることが重要です。本章では、糖尿病になるリスクが高い境界型領域の被験者を対象に実施された「アカシア樹皮由来プロアントシアニジン」による空腹時血糖降下作用に関するヒト臨床試験のエビデンスについて紹介します。
高齢者糖尿病の現状と、安全な血糖コントロールの必要性
日本の糖尿病をめぐる世の中の動きにおいて無視できないのが、加齢に伴うインスリン分泌能の低下や筋肉量減少(サルコペニア)に起因する体の中に入ってきた糖分をコントロールする力が衰えてしまうことです。上記に示した厚生労働省の最新統計(令和6年公開値)においても[2]、男女ともに70代に向けて「糖尿病が強く疑われる者」および「予備群」の割合が顕著に増加している実態が示されています。
高齢者の糖尿病管理において最も注意すべき課題は、「重症低血糖」のリスクです。高齢者は若年層に比べ、血糖値が著しく低下した際の発汗や動悸といった典型的な交感神経症状が出にくいため、低血糖の発見が遅れやすい、無自覚性低血糖という特徴があります。重症低血糖は、単に意識障害を引き起こすだけでなく、転倒・骨折、認知機能の急激な低下、さらには致死的な不整脈や心筋梗塞の引き金となることが明らかになっています[5]。
そのため、最新の臨床ガイドライン等[5]では、高齢者の認知機能やADL(日常生活動作)、低血糖リスクのある薬剤の使用状況を総合的に評価し、安全性を最優先してHbA1cの管理目標値を個別に緩める(例:8.0%未満や8.5%未満など)設定が推奨されています。こうした背景から、医薬品のような低血糖リスクを招くことなく、正常高値や境界型といった早期の段階から安全に空腹時血糖値をコントロールできる機能性素材の存在が必要とされていました。
ヒト臨床試験のデザイン(無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験)
こうした中、植物由来の成分である「アカシア樹皮由来プロアントシアニジン」によるヒト臨床試験が実施されました。試験は、ヒト臨床試験の方法として信頼性が最も高い「無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験」の形式をとって行われました 。
アカシア樹皮由来プロアントシアニジンの摂取により空腹時血糖値が有意に低下した
12週間にわたる継続摂取の結果、アカシア樹皮由来プロアントシアニジンを摂取すると、プラセボを摂取した群と比較して空腹時血糖値を統計学的に有意に低下させることが明らかとなりました[6]。

試験開始時において空腹時血糖値が高め(110〜125 mg/dL)であった被験者に対し、アカシア樹皮由来プロアントシアニジン含有食品を12週間摂取させたアカシア群の空腹時血糖値の平均値は100.4 mg/dLへと降下し、正常レベルにまで改善されました。一方、プラセボ群の平均値は114.3 mg/dLにとどまり、両群間には明確な統計学的有意差(P=0.014)が確認されました。

また、試験開始前からの「血糖値の変化量」においても、プラセボ群の変化量がほぼ横ばいであったのに対し、アカシア群は-14.0mg/dLと大きく低下し、ここでも両群間に有意な差(P=0.013)が認められました。
特筆すべきは、この空腹時血糖値の有意な低下作用が、摂取開始から8週目のチェックポイントにおいてすでに顕著に確認されていたという点です。
この結果は、アカシア樹皮由来プロアントシアニジンが、比較的早期から安定して耐糖能の改善に寄与することを示唆しています。糖尿病への移行リスクを抱える境界型の空腹時血糖値を、安全に正常域へと導いた今回の臨床データは、将来生活習慣病を発症する可能性を低下させるだろうと考えられ、極めて意義あるエビデンスであると考えられます。
【メカニズム】アカシア樹皮由来プロアントシアニジンによる5つのメカニズム

ヒト臨床試験で空腹時血糖値が低下することが明らかとなりましたが、アカシア樹皮由来プロアントシアニジンによるメカニズムも明らかとなっています。この章では、その具体的なメカニズムについて解説します[6]。
骨格筋の代謝を司る「PPARδ」の発現低下を抑制
骨格筋におけるエネルギー代謝をコントロールする上で、最上位のスイッチとして機能するのが、核内受容体転写因子であるPPARδ(ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体デルタ)です。
通常、高脂肪食の過剰摂取が続くと、骨格筋細胞内ではPPARδのmRNA発現レベルが著しく低下し、下位の代謝関連遺伝子が連動して機能不全に陥ります。しかし、アカシア樹皮由来プロアントシアニジンは、高脂肪食負荷による骨格筋でのPPARδのmRNA発現レベルの低下を有意に抑制することが確認されています。
PPARδは、後述するCPT1やACO、UCP3といったエネルギー消費関連遺伝子の発現を上流で包括的に調節する「司令塔」であり、この転写因子の発現維持こそが、アカシア樹皮由来プロアントシアニジンによる代謝低下抑制の起点となります。
脂肪酸のミトコンドリア輸送を担う「CPT1」の維持と、燃焼を促す「ACO」の発現亢進
細胞内において、実際に脂肪を燃焼させてエネルギーを取り出すシステムであるβ酸化に対しても、アカシア樹皮由来プロアントシアニジンは働きかけます。
脂肪燃焼ルートを維持する輸送酵素「CPT1」へのアプローチ
骨格筋細胞に取り込まれた長鎖脂肪酸がエネルギーとして消費されるためには、細胞内にあるミトコンドリアの膜を通過する必要があります。CPT1は、この脂肪酸をミトコンドリア内へと輸送する重要な役割を担っています。高脂肪食の過剰摂取はこのCPT1の働きを低下させますが、アカシア樹皮由来プロアントシアニジンの摂取はその低下を有意に抑え、脂肪酸がスムーズに消費されるルートを維持します。
ペルオキシソームでの脂肪分解を加速させる「ACO」へのアプローチ
ミトコンドリアと並んで脂肪の消費を担う細胞内組織に「ペルオキシソーム」があります。ここには、脂肪酸を分解する第一ステップで重要な役割を果たす「ACO(アシルCoAオキシダーゼ)」という酵素が存在します。
アカシア樹皮由来プロアントシアニジンは、高脂肪食によって低下したACOの遺伝子発現を回復させる作用を示します。
先ほどの「CPT1」によって脂肪酸をミトコンドリア内へとスムーズに運び入れ、さらにこの「ACO」によってペルオキシソームでの脂肪分解を加速させるという、この2つの働きが合わさることで、骨格筋全体の脂質燃焼サイクルが強力に回り始めます。
余剰エネルギーを熱として放散する「UCP3」の発現低下を抑制
脂質が分解されてエネルギーに変わる際、通常は細胞を動かすための「ATP」というエネルギー物質が合成されます。しかし体内には、余剰なエネルギーをあえて「熱」として放出し、脂肪の蓄積を防ぐ仕組みも存在します。その役割を担うのが、ミトコンドリアの内膜に存在する「UCP3(脱共役タンパク質3)」というタンパク質です。
通常、細胞内では特定のATP合成酵素からATPが作られますが、UCP3はこのルートをあえて迂回させることで、エネルギーをATPではなく熱として放散させます。これにより、細胞内でのエネルギー消費(脂肪燃焼)を促すことができます。
高脂肪食の過剰摂取が続くと、このUCP3の遺伝子発現レベルも著しく低下し、余剰エネルギーを熱として消費する機能が十分に働かなくなってしまいます。しかし、アカシア樹皮由来プロアントシアニジンは、高脂肪食によるUCP3の発現低下を有意に抑制し、エネルギーを消費する力を高い水準で維持します。
まとめ:遺伝子発現の正常化から紐解く、空腹時血糖値の低下メカニズム
アカシア樹皮由来プロアントシアニジンは、高脂肪食によって低下する骨格筋の脂質代謝を、遺伝子レベルで包括的にサポートします。
まず、エネルギー消費の司令塔である「PPARδ」の発現低下を抑制し、全体の燃焼スイッチを維持します。その上で、脂肪酸をミトコンドリア内へ運び入れる「CPT1」の機能を保護し、ペルオキシソームでの脂質分解を進める「ACO」の発現を回復。これにより、脂肪の搬入と分解のサイクルを強力に動かします。さらに、余剰エネルギーを熱として放散する「UCP3」の低下も防ぎ、効率的なエネルギー消費を維持します。
この一連の作用によって、骨格筋では効率的な脂質代謝(燃焼サイクル)が維持されます。その結果、脂肪の蓄積に起因するインスリン抵抗性が改善し、体内の組織で糖を取り込む能力が正常化することで、ヒト臨床試験で確認された『空腹時血糖値の低下』へと繋がっていると考えられます。
総括:アカシア樹皮由来プロアントシアニジンがもたらす新たな糖質対策
日本人は肥満でなくても血糖値が上昇しやすい体質にあります。臨床試験において、アカシア樹皮由来プロアントシアニジンは境界型の空腹時血糖値を安全に正常域へと導きました。この背景には、骨格筋の脂肪「輸送・分解・熱産生」を遺伝子レベルで高める明確なメカニズムが存在します。低血糖リスクなく代謝低下の根本原因にアプローチできる本素材は、生活習慣病予防を支える新たな選択肢として期待されます。
参考文献
[1].国際糖尿病連合. IDF糖尿病アトラス 第11版. [2025].
[2]. 厚生労働省『令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要』
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001603146.pdf
[3]. 日本糖尿病学会編『糖尿病診療ガイドライン2024』
[4].一般社団法人日本糖尿病学会『高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について』
[5].日本糖尿病学会, 日本老年医学会 編. 『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』
[6]. Baba A, et al. Functional Foods in Health and Disease. 2021;11(9):431-455.
[7]. Kashiwada M, et al. Journal of Natural Medicines. 2021;75(4):893-906.



