アカシア豆知識と健康科学

「アカシアの名前を巡る歴史」~古代エジプトの薬草から、現代の奇跡のポリフェノール発見まで~

アカシア豆知識と健康科学
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監修:小川 壮介(アカシア研究会 事務局長 兼 研究員)

3500年前から重宝されてきた薬草「アカキア」

私たちの健康を支える「アカシアポリフェノール」は、千種類以上もあるアカシアの樹の樹皮から発見された成分です。実はこのアカシア、非常に古くから人類の歴史に登場しています。アカシアの樹に関する最も古い記録は、今から3500年前の古代エジプト王朝時代に遡り、当時は薬として使用されていました。

また、西暦40年から90年頃(1世紀)に古代ローマで活躍し「薬草学の父」と呼ばれたペダニウス・ディオスコリデスも、「Medicinal Material(薬効のある物質)」という記述の中で、葉や実から得られる抽出物について書き残しています。当時この薬草は「アカキア」と呼ばれており、これが現在の「アカシア」という属名の由来となっています。[1]

爆発的な種類の増加と、植物学上の分類問題

地球上の生物は長い時間をかけて「変化と選択」を繰り返しながら進化してきました。アカシアも種を生存させるために変化を繰り返した結果、世界中で約1350種類が見つけられるまでに多様化し、そのうち約960種類がオーストラリアで発見されています。[1]

1700年代に入り「アカキア」は植物学上で「アカシア」として分類されましたが、1986年に植物学者のレスリー・ペドレイは、あまりにも種類が多いアカシアを特徴ごとに「アカシア」「セネガル(セネガリア)」「ラコスペルマ」の3つに分類し直すべきだと提案しました。[1,2]これにより、最も種類の多いオーストラリアのアカシアが「ラコスペルマ」に分類されてしまうという大きな問題が起きたのです。

アフリカ vs オーストラリア:名前を巡る大論争

ここで、どちらの種が「アカシア」という名前を受け継ぐべきかについて、南アフリカとオーストラリアの間で激しい論争が勃発しました。

  • 南アフリカの主張:アカシアはアフリカ原産であり、最初に命名された種であるため、そのまま「アカシア」であり続けるべきである。
  • オーストラリアの主張:分類された960種類もの多くがオーストラリアで発見されており、オーストラリアの種こそが「アカシア」であるべきである。

両国間・学者間での議論は長らく収まりませんでしたが、2003年にオーストラリアからの提案が出され、2005年のウィーン、そして2011年にメルボルンで開催された国際植物学会議において再検討されました。その結果、最終的に「アカシア」の名称はオーストラリアの種にのみ使用するという結論に至り、オーストラリア側の主張が通ることになりました。[1,3]

960種の「アカシア」誕生と、アフリカの樹種の新しい名前

この国際会議での決定により、結果的にオーストラリアに生息する約960種類の樹種が正式に「アカシア」を名乗ることになりました。一方で、名称を譲る形となったアフリカ原産のアカシアは、その後の植物学的・遺伝子的な研究に基づき分類が再編されました。現在、かつてアフリカのアカシアと呼ばれていた樹種は、主に「バチェリア(Vachellia)」や「セネガリア(Senegalia)」という新しい属名で呼ばれるようになっています。[1,4]

悠久の時間と生態系がもたらした奇跡の成分

論争を経て正式に名前を受け継ぎ、オーストラリア人に愛されてきたアカシアですが、2000年代に入る頃、その樹皮に多くのポリフェノールが含まれていることがわかってきました。[1]

研究が進む中、オーストラリア産アカシアのポリフェノールは非常に特異的で、他の植物には存在しないような成分を含んでいることが判明しました。さらにその成分が様々な生理活性を示し、現在では人の健康に役立つ成分であることが明らかになっています。[1,5]

古代エジプト王朝時代の「アカキア」から始まり、千種類以上の変化と進化を遂げ、その中から現代になって「アカシアポリフェノール」を発見できたことは、まさに悠久の時間と広大な生態系の中での奇跡と言えます。

参考文献

[1]. Ogawa S, Yazaki Y. Tannins from Acacia mearnsii De Wild. Bark: Tannin Determination and Biological Activities. Molecules. 2018;23(4):837.

Access Denied

[2]. Pedley L. Derivation and dispersal of Acacia (Leguminosae), with particular reference to Australia, and the recognition of Senegalia and Racosperma. Botanical Journal of the Linnean Society. 1986;92:219–254.

Derivation and dispersal of Acacia (Leguminosae), with particular reference to Australia, and the recognition of Senegalia and Racosperma – PMC
The morphology of seedlings, leaves, flowers and inflorescences, anatomy of the pod, the occurrence of extra‐floral nectaries, free amino acids of the seeds, flavonoid compounds in…

[3]. Thiele KR, et al. The controversy over the retypification of Acacia Mill. with an Australian type: A pragmatic view. Taxon. 2011;60:194–198.

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[4]. Kyalangalilwa B, et al. Phylogenetic position and revised classification of Acacia s.l. (Fabaceae: Mimosoideae) in Africa, including new combinations in Vachellia and Senegalia. Botanical Journal of the Linnean Society. 2013;172:500–523.

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[5]. Kusano R, et al. α-Amylase and lipase inhibitory activity and structural characterization of Acacia bark proanthocyanidins. Journal of Natural Products. 2011;74:119–128.

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