アカシア豆知識と健康科学

アカシアの根粒菌との共生メカニズム 〜レンゲ畑の知恵から解き明かすアカシアの生命力〜

アカシア豆知識と健康科学
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監修:小川 壮介(アカシア研究会 事務局長 兼 研究員)

植物は大気中の「窒素」を使えない

植物が健康に大きく育つために欠かせないのが、「窒素・リン酸・カリウム」と呼ばれる植物の三大栄養素です。なかでも「窒素」は、植物の細胞やタンパク質、光合成を行う葉緑素(クロロフィル)を作るための最重要成分です。

地球の大気の約78%は窒素で占められています。にもかかわらず、一般的な植物は空気中にいくらでもある窒素を葉や根から取り込んで使うことができません。つまり植物にとって大気中の窒素は「目と鼻の先に大量の食べ物があるのに、栄養にできない」というジレンマのような存在なのです。

マメ科植物特有の「根粒菌」による「窒素固定」の仕組み

このジレンマを鮮やかに解決するのが、土壌の中に生息する微生物「根粒菌(Rhizobium)」です。

根粒菌は、主にマメ科植物の根っこに住みつき、「根粒(こんりゅう)」と呼ばれる小さなコブ状の家を作ります。その根粒菌は、空気中の窒素を取り込み、植物が根から吸収・利用できるカタチ(アンモニア態窒素など)に化学変化させます。これを「窒素固定」と呼びます。[1]根粒菌の存在する根は、まさに「天然の肥料工場」そのものと言っても過言ではないでしょう。

ここではお互いに利益を得られる相利共生が成り立っています。植物は光合成によって作った糖分を根粒菌に与え、根粒菌はそのお返しとして固定した窒素栄養を植物へ供給します。お互いにメリットがある完璧なパートナーシップを築いているのです。

先人の知恵と現代の技術!根粒菌を活用した具体例

根粒菌とマメ科植物の力は、昔から農業や環境保全の現場で有効に活用されてきました。例を見てみましょう。

レンゲ畑の秘密(伝統的な緑肥)

田んぼに花咲くレンゲ畑を見たことはありませんか?化学肥料を使うようになった現代は減ってしまいましたが、昔、農家では、春の田んぼ一面にマメ科の「レンゲ」を咲かせていました。稲を植える前にレンゲを育て、田植えの直前に土と一緒に混ぜ込むことで、化学肥料に頼らずに土壌へ豊富な窒素栄養を補給していたのです。これは「緑肥(りょくひ)」と呼ばれる天然の肥料の考え方の一つです。窒素固定という化学的なことが知られていない時代から、経験的にレンゲが植え付けられてきたことに驚きを隠せません。

クローバーやヘアリーベッチ(農業・雑草対策・土壌改良)

果樹園などでは、樹木の足元にマメ科のクローバーやヘアリーベッチが被覆植物(カバーグラス)として植えられています。土壌に窒素を補給して肥沃にすることはもちろんですが、クローバーやヘアリーベッチが広がることで、その他の雑草の繁殖を抑えることもできるのは一石二鳥です。

砂漠化防止と植林事業(環境緑化)

栄養の無い土壌や乾燥した荒廃した土壌における地緑化プロジェクトでは、まず根粒菌と共生できるマメ科の樹木や木本植物を植える手法がとられます。[2,3]これは、マメ科の植物が肥料のない土壌でも自力で育つからであり、その後の他の植物が育つための土壌の栄養基盤を作ってくれるためです。このお話はまた別の機会で紹介します。

不毛の地でもグングン育つ!マメ科樹木「アカシア」の強さ

私たちが研究を重ねている「アカシア」も「マメ科」の樹木です。

アカシアが砂漠化の進む乾燥地や、栄養の枯渇した不毛の土地でも力強くぐんぐん育つことができる最大の理由は、この根粒菌との共生にあります。アカシアは自らの根にある意味での肥料工場を持っていると言えるため、人工的な肥料が一切ない環境でも自力で栄養を確保することができます。

さらに、アカシアが成長して落とした葉や枝には窒素栄養がたっぷり含まれており、これが分解して土に還ることで、周囲の土地そのものを豊かな土壌へと生まれ変わらせます。アカシアは環境の開拓者でもあるです。

足元の小さな微生物が育むアカシアの生命力

アカシアが持つ驚異的な生命力や、樹皮などに豊富に含まれる高品質なポリフェノールをはじめとした機能性成分の源流をたどると、足元の根っこで繰り広げられる小さな微生物である根粒菌との共生に行きつきます。

自然界の巧みなネットワークを知ることで、アカシアという樹木が持つ魅力と可能性を実感していただけるのではないでしょうか。

参考文献

[1]. Lepetit M, et al. Front Plant Sci. 2023;14:1114840.

Control of the rhizobium–legume symbiosis by the plant nitrogen demand is tightly integrated at the whole plant level and requires inter-organ systemic signaling – PMC
Symbiotic nodules formed on legume roots with rhizobia fix atmospheric N2. Bacteria reduce N2 to NH4 + that is assimilated into amino acids by the plant. In return, the plant provi…

[2]. Chaer GM, et al. Tree Physiol. 2011;31(2):139–149.

Just a moment…

[3]. Lopez-Lozano NE, et al. Plant Soil. 2016;403:317–329.

Using native trees and cacti to improve soil potential nitrogen fixation during long-term restoration of arid lands – Plant and Soil
Background and aims A major problem in all restoration and rehabilitation projects is to restore the function of the ecosystem. Nitrogen, next to water, is the most limiting factor…

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